コアラの名回答集 ʕ•ᴥ•ʔ
2022年08月05日

長い広告コピーと短い広告コピーでは、どちらのほうが商品が売れますか?

仕事でコピーを書いています。

私の回答は以下の通りです。

商品を売るために必要なコピーの長さは、「顧客がどれくらい商品を認知しているか」によって、変化します。なので、ロングコピーとショートコピー、どちらのほうが売れるかはケースバイケース、というのが私の答えです。

どういうことか?説明しましょう。

世の中には、余白たっぷりのイメージ広告もあれば、通販広告のように、隙間なく文章で埋められている広告もあります。・・・でも、一体何が違うんでしょうか?

上の画像のように、同じ広告でも、左側の adidas の「イメージ広告」と、右側の青汁の「通販広告」では、そもそも担っている役割が違うのです。

この違いを説明する上で役に立つのが、アメリカのコピーライター、Eugene Schwartz(ジーン・シュワルツ)の「意識レベルの 5 段階」です。これは、顧客があなたやあなたの商品のことをどれだけ知っているかを表した図です。

(画像引用元:ペルソナ設定のポイント~商品認知レベル編~)

繰り返しになりますが、顧客があなたの商品をどれだけ認知しているかに応じて、広告に必要なコピーの長さは、長くなったり、短くなったりします。

① 商品を全く知らない見込み顧客には、短いコピーでも良い(レベル5)

あなたが新商品を売りたいと思っていて、市場がその商品のことを全く知らない場合。いきなり広告内でズケズケとセールスしても売れない可能性が高いです。なぜなら、欲しいとも思っていないし、あなたの商品のことを知らないからです。

なので、相手があなたの商品のことを全く知らない時には、その商品を「認知」させることにフォーカスする必要があります。つまり、市場が認知レベル5にあるときは、広告のゴールは知らせることであり、売ることではありません。

もちろん、商品の特性によっては、ただ存在を知らせるだけでは不十分です。「なぜこの商品が、自分に必要なのか?」を認知してもらわなければなりませんよね?

例えば、猫背矯正ベルトを売りたいなら、まずは見込み顧客に「自分は猫背だ・・・」と気がついてもらう必要があります。ダイエット器具を売りたいなら、相手に「自分はデブだ・・・」と自覚してもらう必要があります。

もちろん猫背矯正ベルトもダイエット器具も市場には飽和しています。だから企業は、ある時には「スマホ首」と言ってみたり、ある時には「腸活」と言ってみたり、あの手この手を使って、新たな市場を創り出します。自社商品が唯一の解決策だと認知させるために、広告を使って、人の頭の中に「新しい悩み」や「新しい欲求」を作っているのです。

話しがちょっと脱線しました。商品を全く知らない見込み顧客には、短いコピーで良い。と言いました。

あなたは、Apple が iPod を初めて市場にリリースした時のことを覚えていますか?

この時のマーケティングメッセージは”thousand songs in a pocket(1000 曲をポケットに)”だけでした。

iPod を広く認知させるために、Apple はこのメッセージ1つに「絞った」のです。

(注意:これは潤沢な広告予算のある大企業ができる広告戦略です。広告予算の少ない中小企業が、この Apple の広告を真似すると、売り上げを回収できずに失敗します。なぜなら、市場の創造には莫大なお金がかかるからです。)

② ホットな客には、短いコピーでも売れる(レベル1)

短いコピーを使うシチュエーションがもう1つあります。

それは、お客さんがすでにあなたの商品のことを知っていて、欲しいと思っている場合です。ただしさっきとは異なり、市場が認知レベル1にあるときは、広告のゴールは売ることです。

レベル1は、超ホットな状態です。価格や性能などの最低限のコピーで売ることができます。

これもまた Apple を例に出しますが、歴代 iPhone のマーケティングでは、一度も長いコピーが使われたことがありませんでした。(かっこよすぎ? 歴代 iPhone のキャッチコピーを振り返る)

長い商品説明なしに、なぜ高額な iPhone を売ることができたのか?・・・それは市場にすでに「Apple 信者」がいたからです。目の前に商品を置くだけで、買ってくれる人たちの市場があったからです。長々とした説明は必要ありませんでした。

③ 見込み顧客の知りたいことが具体的になったとき、広告コピーは長くなる
(レベル2&3&4)

広告にロングコピーが必要になるのは、中間層の商品認知レベルにいる人たちです。この認知レベルの人たちは、購入を検討するための、より具体的な情報を求めています。だから、コピーが長くなっていくワケです。営業マンのセールストークと同じですね。

例えば・・・

・機能や性能
・得られる有形無形のベネフィット
・サイズ、色、重さ
・お客様の声、権威者の推薦、科学的な数値やデータ
・限定個数、申し込み締め切り、クーポン割引、返金保証、返品の可否
・価格、購入方法、決済手段、発送の方法、日時指定はできるか

通販広告というのは、上記の要素を1枚の広告紙面に詰め込んだ広告です。

ヘッドライン(見出し)で「認知」させて、ボディコピーで共感を示し、お客様の声を並べ信頼性を高め、データや科学的証拠で反論処理をして、限定性や期限付きクーポンで購買意欲を駆り立て、最後にお申し込みはこちら〜という風に「行動の呼びかけ(CTA)」をします。

一連のセールストークのプロセスが、広告スペースに全て詰め込まれているワケです。

広告は “salesmanship-in-print”「印刷されたセールスマンシップ」である -ジョン.E.ケネディ

もしあなたが少ない予算で広告を出すのなら、冒頭で説明したイメージ広告は避け、ロングコピーの通販広告・レスポンス型広告を使うことをお勧めします。いくら使っていくら売り上げが上がった、という費用対効果が見えるだけでなく、広告単体でのセールス力は、圧倒的に後者の広告手法が強いからです。

補足 1:扱う商品の特性によって、ある程度コピーの長さは決まります

インターネットでボールペンを1本買うのと、生命保険に加入するのでは、申し込む際の不安の度合いが違いますよね?

(画像引用元:Copywriting: Long copy vs. short copy matrix - MarketingExperiments)

この図を見てわかるように、導入が複雑なサービスや、一度買ったら取り返しのつかない商品であるほど、より言葉を尽くしてセールスする必要があります。ロングコピーが必要かどうか、商品の特性によってある程度見極めることができます。

補足2:大は小を兼ねるから、ロングコピーの広告が有利ではないか?

大は小を兼ねるから、いつも長いコピーを書いた方が、売り上げが伸びるんじゃないのか?という人もいます。必ずしもそうとは限りません。理由は2つあります。

・1つ目の理由は、コピーを長くすればするほど、ユーザーに読まれにくくなるということです。ユーザビリティの第一人者ヤコブニールセン博士は、平均的アクセス中にユーザーが読むテキストの量は多くても全体の 28%にすぎないと分析しています。(参考リンク:ユーザーはいかにテキストを読まないか)

相手が必要としている以上の情報を広告内に詰め込めば、相対的に”流し読み”の量も増えます。購買を後押しする重要な情報もスルーされてしまうので、結果セールスにつながりにくくなります。

紙面広告では難しいかもしれませんが、ランディングページなどでは、最適なコピーの長さを A/B テストで確かめてみるのが良いです。実際にやってみるとわかりますが、古典のコピーライティングの教本に書かれているように、必ずしも長いコピーが勝利するとは限りません。

(画像引用元:#webclinic7THE EFFECTIVENESS OF SHORT COPYKey)

・ロングコピーが必ずしも有利ではない理由2:スマホユーザーの閲覧が増えていること。

2017 年の通信利用動向調査によると、個人がインターネットを利用する機器はスマートフォンが 54.2%と、初めてパソコン(48.7%)を上回った

スマホの画面は、パソコンモニターの何倍も小さいですよね。ドアの覗き穴越しに新聞を読むのが難しいように、ロングコピーの LP を、スマホの小さな画面で読むのは無理があります。

なので、相手が使っているデバイスを考慮して、コピーをある程度”引き算”する必要があります。

優先度の低い情報は、奥の階層のページに「先送り」したり、セールスの都合上、LP から他のページに離脱させたくない場合は、コンテンツ部分を折りたためる「アコーディオン形式」にするのが良いです。

おまけ:スマホ時代の Web コピーは”箇条書き化”していくのでは?

ロングコピー、ショートコピーに関する回答は以上です。

最後に私見ですが、スマホ全盛の時代の Web コピーは”箇条書き化”していくのでは?と思っています。優れたコピーは、短くても”含み”を持たせることができるからです。相手の状況、文脈を汲んだ(ハイコンテキストな)コピーライティングが中心になるのではないでしょうか。

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2020.3 追記
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Yuki Nakano