コアラの名回答集 ʕ•ᴥ•ʔ
2022年08月06日

デザインと機能が両立しているプロダクトを教えて頂けませんか?ジャンル不問です。

これをご紹介したくなりました。

使い方はとても簡単で、特定の砂漠や平原に「転がしておくだけ」、つまりほったらかしで絶大なる効果を発揮する優れ物なのですが、何だかわかりますか?

答えは「地雷除去装置」です。

名前を「Mine Kafon」と言い、アフガニスタン出身のデザイナー Massoud Hassani さんによってデザインされ生み出されました。

Mine Kafon は、地雷が埋められた危険地帯を風の力で転がり続け、先端に付いたたくさんの足で地雷を踏み、爆破して除去します。

構造は至ってシンプルで、中央の球体を本体として、そこに竹製の脚部と先端にプラスチック製の円盤を取り付けるだけです。爆破によって脚部と円盤は破損しますが、交換すれば繰り返し利用できます。中央の球体部分には GPS が搭載されており、通過した経路はそのまま安全地帯として確定するというわけです。

地雷は、「人を殺すこと」を目的としない兵器なのですが、その分むしろ残酷だったりします。そもそも地雷は地中や地上に設置され、人や車両が踏んだり触れたりすることで爆発する兵器で、紛争や内戦の際に自分たちの土地の周辺に埋めることで敵対する勢力の侵入や進行を防いだり、通過するであろう場所で待ち伏せ攻撃をするために使われます。その目的は敵の手足を失わせることにあり、傷ついた兵士を他の兵士 2 ~ 3 人で運ぶため敵の戦力を低下させることができるばかりか、手足を失い苦しむ味方の姿を見せつけることで戦意を喪失させます。また、一度埋められると、戦争が終わっても誰かが踏むか除去されるまで残り続けます。相手を選ばず作動するため、被害者の 7 割以上が一般市民です。地雷は 1 つ数ドル程度と非常に安価であるため、主に 1970 ~ 90 年代に各地で頻発した内戦でおびただしい数の地雷がつくられ、今もおよそ 60 ヵ国に 1 億個以上もの地雷が埋まっているとされています。報告された被害者数は、1999 年から 2018 年の 20 年間で 13 万人以上にのぼり、今でも年間数千人、そしてその半数以上は子供たちです。

中でもアフガニスタンは、地雷が埋まっている場所の面積も被害者数も世界トップで、Massoud Hassani さんによる「Mine Kafon」の誕生につながるのですね。

地雷は、1個を撤去するのに 300 ~ 1500 ドルの費用が必要と言われています。完全に撤去するには、希少な専用重機の順番を待つか、手作業に頼らざるを得ず、いずれにせよ膨大な時間と費用が必要となります。

その点、Mine Kafon は 1 個数十ドルと超安価、人手を掛けず、かつ人命を危険にさらすことなく地雷を除去できるのです。

回答です。

「機能美」という言葉がありまして、何かを作るときに機能のよさを盛り込むことなのですが、これもデザインのうちに入ります。一方、装飾などによって見た目の良さを追求して感情に訴えたり印象に残すのももちろんデザインなのですが、こちらは「装飾美」と呼ばれます。

何かをデザインするときは必ず目的があり、Mine Kafon は人々の安全を脅かす存在を安価に排除できるという意味で、シンプルな構造に計り知れない価値を宿した機能美を体現していると思います。

ただ、こんなに素晴らしいデザインである一方で、人類は有史以来一度たりとも戦争がなくなったことがありません。

誰もが平和を望むのに誰も平和を実現できないでいる中で生み出された Mine Kafon が砂漠を転がる姿に、人類の悲しさと愚かさを見てしまうのは私だけでしょうか。

hoge

人事や組織の課題を解決する仕事
Tsuji Ryuto